現在NETFLIXで配信されている中国のSF映画『流浪地球/流転の地球』。本作は劇中随所に物語の世界観や背景事情を紐解く様々なヒントが隠されている。またディテールにこだわった様々な演出も施されている。今回、中国の微博ユーザー「伊利達雷之怒」の原文を元に、それぞれのシーンの解説文を日本語訳しました。これを読めば、より一層映画を楽しめるかもしれません。★ネタバレご注意★

原文:【高清】《流浪地球》细节考据,以及影评


1.ニュース番組で「地球流転計画」を報道した際に、テロップで「車両の球体ハンドル技術によって、大型車両を運転する年配者の体の負担を軽減できる」と流れており、これはなぜ70歳も越えた韓子昂が高級運転手の職に就けたのかを事前説明している。


2.抽選方式による地下都市への移住許可は一部の国家で反対され、そのため大規模の衝突が発生し、人口が急激に減少した原因の一つになった。(劇中では描かれていませんが、地上にも僅かながら生存者がいるようだ。)


3.「地球流転計画」は2019年に始まり4519年に終わる。その間、約2500年もの歳月を費やした。地球が目指した場所は4.2光年離れた三重連星から成る「ケンタウルス座α星系」。これは劉慈欣のSF小説「三体」シリーズへのオマージュ。


4.アメリカ合衆国ニューヨークでストライキ発生。これによって市内四か所の地球エンジンの製造に影響を及ぼした。


5.テレビ画面の右から映画の原作小説の作者である劉慈欣、呉京、そして顔だけ出演の郭京飛が写っている。テレビのチャンネルは「CUCTV」で、これは「China Underground Center TV」の略で中国地下中央テレビの略。


6.韓子昂の運転資格証、劉啓の母の写真、そして劉啓自身が発明したロボアームの設計図。


7.テレビモニターには「黄金時代体験授業」の文字があり、地下都市に生活しながらも、古き良き時代の授業を子供たちに体験させている。


8.旅行、装備、各種証明、水道工事など、たとえ時代が変わっても変わらぬ業者の宣伝や広告ビラはそこにある。


9.ポスターには「木星通過する際は災害に注意」という注意喚起ポスターがある。これは後に起きる木星衝突事件への伏線。


10.ブラックマーケットの兄貴が劉啓のために身分証を偽装したが、その際にすり替えた人物の写真は本作の副監督の郁剛。映画の物語は2076年で、郁剛の生まれた年は2035年、今年41歳。まさにご本人の年齢と一致。


11.二人の頭上の標識には北京第十三中学校と書かれてある。郭帆監督の母校は済寧十三中学校。


12.地面での任務は非常に危険のため、兵士たちは劉啓ら任務遂行する人たちに敬意を込めて敬礼をしている。


13.地球が太陽系の軌道から離れる際に気温が急低下し、地表温度は零下84度。また地球エンジンの燃料となる大量の岩石が採掘され、そのため地球の総質量が減少。さらに地球の加速や木星に接近している事もあり、地球の重力は9.8N/Kgから9.5N/Kgまで低下。


14.劉培強がロシア人のマーとの会話で耳に付けた装置には同時通訳システムがあり、これによって宇宙ステーションで働く各国の人はそれぞれの母国語を話しても問題なく交流できる。


15.劉培強が目覚めた時、窓の外にある木星の大きさに合わせて丸を描いている。これは宇宙ステーションが徐々に木星に接近している証拠。また吊るしてあるコマは簡易式ジャイロスコープで、物体の角度や角速度測定などに用いられている。


16.ロシア人のマーが劉培強に渡したお酒のアルコール度数は70度。最終的にMOSSを破壊するキーアイテム。


17.拘留場の日直表(これの意味が分からない…)


18.90年代に生まれた韓子昂は海草ダンスとTikTokが好きなのは当然。90年代に生まれた人は劇中の韓子昂と同世代なのだ。


19.木星衝突危機発生後、連合政府は飽和式救援を実行。世界中の人々が団結し救援へと向かった。決して主役たち一行が地球を救った唯一の英雄という訳ではない。


20.周倩の胸元にある八つのハートは八名の救援隊隊員を意味していると思われる。それぞれ隊長の王磊、偵察員の溜子、砲撃手の錘子、運転手の剛子と陸仁賈、技術員の老徐、技術員の黄明、そして医務員の周倩。


21.一か所のミス。韓子昂が怪我した際に、酸素が漏れてしまっていたが、アームのモニターには「気密性良好」と表示されていた。


22.劉啓、韓朶朶、韓子昂三人が拘留場にいた時、劉啓は「(朶朶)連れて行く気はなかった。あいつがどうしてもって言うから」と言い、そして韓子昂が死ぬ直前、14年前に朶朶を海から救った回想シーンが流れていた。この事から、韓子昂が亡くなった時、朶朶が「おじいちゃん、ごめんなさい」としきりに謝っていたのは、自分が地上で親を弔うために、無理やり兄に付いて来た事で韓子昂を死なせてしまったーという後悔の念があったからかもしれない。


23.冒頭で中国南部で深刻な津波被害と報道されたニュースのテロップで「未成年者は優先的に撤退、成人は部分的撤退」と流れており、そして韓子昂と幼少期の朶朶のシーンの壁には、「天災無情人有情、孤児扶養暖人心(天災は非情だが人には情けあり、孤児を扶養することで人の心は暖まる)」という標語が書かれていた事から、人類未来の希望の象徴でもある子供は常に率先的に優遇され、地下に暮らす住民たちには孤児の扶養活動を推し進めている。これも韓子昂が韓朶朶を世話するようになった理由の一つ。


24.パワードスーツの肩には現在のスーツ状態を表すライトがあり、歩行時には青色、着火石を運んでいる時は黄色、人間二人と着火石を運んでいる時は赤色と表示された。


25.救援隊が上海タワーへ入った時、上海タワーのシンボルで、一階のエントランスに展示してある「上海少女」の彫刻のシルエットが映された。


26.一か所のミス。木星のロッシュ限界は実は木星内部にある。この事から、地球は木星に直接衝突するのであり、上空で分解されるのではない。しかし劇中では上空で分解されるシミュレーションがされていた。


27.カプセルに休眠気体が注入され、劉培強は強制的に休眠状態にされそうになったが、直前に取り外した酸素ボンベのおかげで後々無事にカプセルから脱出できた。


28.劉培強が休眠状態から脱出した際に、MOSSは「全ての(規定)違反者は直ちに地球への連絡を中止せよ」とのアナウンスをされていた事から、劉培強以外の他の乗務員もMOSSの反乱に気付いている。(事実、劉培強とマー以外の乗務員も、中央コントロールルームへ向かうためハッチを破壊している)


29.EMP爆弾。MOSSは低消費電力モード時に乗務員の行動を禁止している。劉培強はハッチを開けるため、EMP爆弾で強制的に宇宙ステーションの電子ロックを解除した。


30.李一一が初登場した時、朶朶を人質にひどく怯えながら叫んでいたが、実はここも大量のシーンがカットされた。彼が所属していた救援隊の他の隊員は何者かによって銃殺された。つまり任務遂行する時に襲撃されたと見られる。(原作小説には反乱軍が描かれている)


31.地球が滅亡を迎えても、運転する際はシートベルトを。


32.王磊隊長の妻子は今回の杭州地下城の事故で亡くなったのではなく、もっと前に亡くなっていたのかもしれない。郭帆監督はかつて、第二部の物語は杭州地下城をメインに展開されると話した事から、王磊隊長の娘は生きており、そして登場する可能性もある。


33.李一一は劉啓のチームになぜ外国人がいるのかという疑問を抱く。本来、ここで李一一と劉啓が言い争いをするシーンもあったが削除された。ここのシーンは地上の反乱軍と何等かの関係があるようだ。


34.救援隊の黄明は自らのパワードスーツのバッテリを使って着火石の維持装置に電力を供給したため凍死してしまう。これも周倩はなぜ着火石を壊すのかを説明している。杭州地下城は既に壊滅状態にあり、任務は失敗した。このまま任務続行しても無駄死になるだけ。周倩が着火石を壊した理由はそれだ。


35.28番で述べたように、劉培強以外にも他の乗務員がMOSSの反乱に気付き、中央コントロールルームでMOSSの制御を試みる人もいる。つまり劉培強がいなくても、他の乗務員が全人類のために犠牲をする可能性もある。


36.MOSSが脅威排除の対抗処置としてハッチの前で水を噴射。その水は冰の塊となり、マカロフのスーツとヘルメットに穴を開けた。この時、モニター上に表示されている水の残量は1目盛り減っている。






37.飽和式救援の結果、大量の地球エンジンは再起動され、劉啓らは最後に任務を遂行させたチームだ。

①日本JP041-02:大阪3号エンジンを再起動
②中国CN189-03:カシュガル1号エンジンを再起動
③ロシアRU212中隊:ソチ1号エンジンを再起動
④ノルウェイNO013-01:トリノ2号エンジンを再起動
⑤クロアチアHR011-08:シンガポール2号エンジンを再起動

この映画の良さはなんと言っても、世界を救うのはもはやアメリカ人だけの使命ではなく、クロアチアのような小さな国でも救援活動に参加し、世界を救っている事だ。


38.想像するだけで恐ろしいシーン。MOSSは「ヘリオス計画」を起動したと同時に、休眠カプセルの生命維持システムと船長ログを停止。つまりMOSSは乗務員全員の殺害を計画しており、居住に適した惑星へ到着後、受精卵によって成長した新人類はMOSSがかつて何をしたのかは知る由もない。

①オペレーション・システム:OFF
②クルー&チームステータス:ON
③乗客生命維持:OFF
④燃料状態:ON
⑤エンジン作動データ:OFF
⑥ミッションレポート:ON
⑦DNAモジュール:ON
⑧船長ログ:OFF


39.「流転地球」計画が失敗と宣告された際、張小北監督が演じるドライバーのこめかみには、レーザーウェポンによる火傷の傷跡がある。これも反乱軍組織に関係しているかもしれない。


40.映画の冒頭でバニーガールの件で喧嘩をしている夫婦。事故発生後、夫は服を脱いで重傷を負った妻の手当てをしている。決して部分的な観客が思っているような、混乱の最中にセクハラしている訳ではない。(そんな風に思っている観客の心は邪悪だな…)


41.連合政府はMOSSに「ヘリオス」計画の起動を許可。「全ては人類のために」。この事からMOSSは反乱を起こした訳ではなく、「流転地球」計画が失敗した時、人類という種の保全を優先的に考慮した合理的な判断とも言える。


42.スラウェシ3号エンジンのゲートにはインドネシアの国旗が。つまりここはインドネシアの領土だ。


43.劉啓一行がフィリピン人に救援を求める際も同時通訳システムを使用。これも多国籍の役者が劇中で全員英語や中国語を話しているという違和感をなくすための工夫。


44.地球が木星に最接近。木星の引力を受け、この時の地球の重力加速度は8.6N/Kg​までに減少。この他、地球エンジン付近の室内気温も零下84度から一気に120度まで上昇。この影響を受け、劉啓のヘルメットが破られても凍死される事がない。そして最後、ついに地球エンジンは再起動した。


45.ホーさん秘蔵のたばこ。フィルター部分が非常長い。極寒の地上で作業する人は常に厚い手袋を着用しているため、フィルター部分が長いと指で挟みやすいからだ。

ー 更新続く ー