7月24日、中国の動画配信サイト「愛奇芸」にて配信開始されたサバイバルミステリードラマ『無主之城』。百数人の乗客を乗せた列車が脱線事故で閉鎖されたトンネル内へ衝突。生き残った乗客が脱出したその先は、無人廃墟と化した孤島の街だったー。

制作段階から興味を抱き、配信直後に序盤の2話を観賞した時点で「少し残念に思える」との率直な感想をTwitter上で呟いたが、今思えば少し早合点だった。何故なら、この作品は続けて観ていかなければ、真の面白さに気付く事など出来なかったからだ。


序盤の導入部だけを観れば、似たようなサバイバルミステリー系の欧米ドラマは既に何作も制作されてきており、決して斬新な作品とは言えないだろう。しかし私が知る限りでは、このような一定の制作基準を満たした、クオリティの高いサバイバルミステリー系の中国ドラマは以前にはなかったはずだ。『無主之城』はある意味、従来の制作概念を打ち破る一種の挑戦作品とも言える。


前述したように、『無主之城』の物語は謎の孤島にある廃墟の街で展開されるサバイバルミステリー。身分や性格も異なる生存者たちは生きていくために食料を奪い合い、次第に協力関係から対立関係へと変化していくその人間性は本作の見所と言える。また、孤島の謎を解明するという主軸の他に、それぞれ主要人物にも何かしらのバックストーリーが用意されている群像劇な演出も、視聴者を飽きさせない面白い要素の一つとなっている。

妻の死を究明する元刑事の羅燃、かつて孤島の街で生活していた母親の死の謎を究明する江雪、狡猾な手段で自分の勢力を拡大する商人の陳立など、一見接点のない登場人物の間にも、実は見えない糸によって結ばれているような伏線だらけな演出も、観る者の興味と好奇心が掻き立てられる。そして何より出演者たちの迫真の演技も相まって、改めて面白い作品だと太鼓判を押してあげたい良心的作品。

配信先:愛奇芸『無主之城』