
11月26日より、中国の動画配信サイト「騰訊」と「愛奇藝」にて配信開始された架空歴史ドラマ『慶余年/Joy of life』。現在Youtubeの「优优独播剧场」チャンネルでも配信されている。本作は謎めいた身分を持つ青年の范閑がとある真相を探るべく宮廷へと足を踏み入れ、そこで遭遇した数々の事件を経験し、やがて名を馳せ、成長してゆく姿を描いた時代劇だ。
さて、配信された第一話を早速観賞したので感想を述べたいと思うが、以前公開された厳かな雰囲気を醸し出すシリアステイストな予告編とは裏腹に、初っ端からコミカルでユーモアな演出に抱腹絶倒した。『慶餘年』はこんなも気楽で観れる作品だとは思わなかった。もっとこう殺伐した雰囲気の中で、主人公が復讐に向けて知略を巡らすサスペンス性が強い作品だと思っていたが、まさかのコメディw
本作の脚本を手掛けたのは、中国の著名脚本家の王倦だ。代表作である『木府風雲』『舞楽伝奇』『大宋少年志』はどれも評価が高い作品。『慶余年』の原作物語は壮大かつ複雑で、それを映像化する事は困難だと言われたが、王倦ならやり遂げてくれるという安心感はある。
第一話から重苦しい雰囲気だと、視聴者も敬遠しがちだが、あえて序盤はユーモアな演出を施し、徐々に物語の世界観を慣れさせてからグイグイと引き込んでいった方が、視聴者も受け入れやすいという考えなのかもしれない。すごく賢明だと思う。
ただまだ第一話しか観ていないので、今後の展開もその面白さが続くのかどうかは分からないが、ひとまずつかみはOK!といったところかな。序盤はコミカルな展開が続きそうだが、物語が進むにつれて、予告編で観たような権謀術数な戦いやシリアスストーリーも登場してくるだろう。結構楽しみだ。

さて、ここからは本作の大事な要素でもある「タイムスリップ」について説明したい。「歴史ドラマにタイムスリップ要素は禁止」というレッドラインを、ドラマ化した『慶余年』どのようにしてクリアしたのか。
本作の原作小説は主人公が過去へとタイムスリップし、そこで遭遇する一連の事件を描いたSF架空歴史作品だが、中国では「歴史ドラマにタイムスリップ要素は禁止」という暗黙のルールがあり、長らくご法度とされてきた。しかし本作はその禁止された要素に対し、実に巧妙な解釈によって映像審査を通過させたというのだ。
その解釈とは、本作で描かれる物語の全ては、古典文学を熟読した現代の大学生が、教授に自分の「現代思想を以って古代制度の解析」そして「二度目の命があるのならー」というテーマの論文を認めさせるべく、創作小説を通じて自分の観点を伝えるーというものだ。つまり実在人間による過去へのタイムスリップではなく、あくまでも大学生による創作小説内でのお話という劇中劇だ。

この解釈を冒頭シーンと劇中ナレーションを加えただけで、本作に登場する未来からやってきた主人公はなぜ現代思想を持ち、そして古代に似つかわしくない現代用語を連発するのかーという説明もつく。事実、似たような手法も過去にいくつかのドラマで使われた事もあり、タイムスリップ歴史ドラマでありながら、配信許可された作品もある。まさに「上に政策あらば、下に対策あり」w
ちなみ「なぜ中国でタイムスリップドラマは禁止されるの?」と首を傾げる方もいらっしゃると思いますが、あくまでも広まっている噂だが、「青少年はタイムスリップが出来ると思ってしまう。」または「史実歴史と著しくかけ離れた内容になる恐れがある」という名目で禁止しているようだが、実際に規制される理由は誰も知らない。後者ならまだ分かるが、「タイムスリップが出来る!」などと本気で思っている青少年が本当にいたら、それはドラマに非があるのではなく、教育の方に問題がありなのでは?w
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