3月28日付け、4月4日より中国本土にて公開予定だった、婁燁(ロウ・イェー)監督の最新作映画『風中有朶雨做的雲/The Shadow Play』は"不可抗力"により上映中止になった模様。一説では、作品の一部内容に問題があるとして、再編集と審査が必要との事。

新浪電影の担当者は制作側に事実確認したところ、「全力を尽くす。」とだけ返答した。また本作の主演となる秦昊(チン・ハオ)も上映中止された件に対し、自身の微博で以下のように述べた。


“你看,所有的事都是这样,会过去,被忘记。”——《风中有朵雨做的云》
​​​​ 「ほら、どんな出来事も過去のものとなり、忘れ去られてしまうものだ。——『風中有朶雨做的雲』」


実際の汚職事件を描いた『風中有朶雨做的雲』


映画『風中有朶雨做的雲』は実力派の井柏然(ジン・ボーラン)、馬思純(マー・スーチュン)、秦昊(チン・ハオ)、宋佳(ソン・ジア)らが主演を務める。第55回「台湾金馬奨」にて監督賞、撮影賞、音響効果賞、アクション監督賞の四部門にもノミネートされ、作品に登場する人物たちの人間性を鋭く描き、映画祭でも話題を呼んだ。

作品の物語は中国南方の沿岸街を舞台に、建設委員会の主任である唐奕傑がビル撤去作業中に、ビルから墜落して死亡してしまうところから始まり、事件を担当する若き刑事の楊家棟は調査していくうちに、建設企業の賄賂や政府役員による汚職が徐々に明るみに出る過程を描いている。


僅か10年前、かつて中国広州には"独立王国"が存在していた。それが映画『風中有朶雨做的雲』の舞台ベースにもなった「冼村」だ。本作の物語もまた、その中国広州の冼村で実際に起きた、村支書の盧穗耕による汚職事件をベースに描かれている。
(参照:广东百亿村官外逃案

若干26歳で冼村の村支書になった盧穗耕は、当時の建設ラッシュを利用し、村人に事実を隠して広大な敷地を私有化していった。また人脈関係や職権乱用し、33年間にも渡って企業から莫大な賄賂を受け取っていった。その資産額は数千億円にも上るという。そして2013年。中国政府による反汚職運動が盛んになり、危険を察知した盧穗耕は逃走し、未だに逮捕されていない。

昨今、こうした論争を巻き起こしやすい事件を真剣に描ける中国監督はそう多くない。婁燁はまさにそんな数少ない監督の一人だ。映画『風中有朶雨做的雲』は再び上映許可されるのかは未知数だが、秦昊が呟いた言葉のように、忘れてはいけない過去の出来事もある。ご都合主義だけで作品の表現自由を奪ってはいけない。本作が再上映できる事を願う。

情報元:网传娄烨《风中有朵雨做的云》撤档 片方:尽全力